悪医/久坂部羊
またもや傑作。
やってくれます久坂部羊せんせい……!
どれもこれもが傑作揃いです。
『無痛』で初めて久坂部作品に触れ、大ショックを受けて貪るように著書をすべて読みました。
先生は現役の医師で、『医療の闇』をテーマにされています。
読めば激しく引きずり込まれる作品ばかり。
大好きな作家さんなのに、去年末に出た新作を知りませんでした!なんてこと!
期待を大きく上回る、大満足の作品でした!
『悪医/久坂部羊』
患者・52歳男性。早期の胃がんの手術を受けるも再発・肝臓へ転移。
医師・35歳男性外科医。患者の手術を担当。
がん患者と医師の立場で交互に物語が進んでいきます。
医師からしたら、打てる手は尽くした。
治療を続けても副作用の苦しみが回復より上回る、
更に寿命を短くするだけ。
だから残りの時間を苦しむことに終始させるのではなく
まだ体力のあるうちに治療を打ちきり有意義に過ごした方がいいだろうと思う。
患者は、治療を打ちきると言われることは、
死ねと言われることと同じこと。
まだ出来る方法があるなら治療を続けてほしいと思う。
この溝。
非常に難しい……。
医師は、"どうして分かってもらえない!?"と伝え方に最後まで悩みます。
その道の権威に相談するも決定的な答えは出ず。
もし自分が手遅れのがんで、治療打ちきりを医師に言われるとき、
どう伝えて欲しいだろう?
そう思わずにはいられませんでした。
その後患者は、死にたくない一心で数々の病院を転々とします。
巡り巡って、最期に気付きを得るのです。
特筆すべきは久坂部作品はどれもそうですが、
表現力がずば抜けて優れているのです。
情景が目に浮かぶのです。
今回も終始、まるで映像を観ているような感覚でした。
患者の描写が非常にリアルで、まるで先生ががんにかかっているのでは!?という程。
壮絶。
よくぞここまで描ききったものです……!
文句なしにおすすめです!
是非一読あれ!
- 作者: 久坂部羊
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2013/11/07
- メディア: 単行本
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